上越国境分水嶺縦走
4-1-1尾瀬ヶ原東電小屋から巻機山 1994-5-28〜6-1
1994年5月28日（土） 快晴
東電小屋（8:00）→笹山（8:55）→景鶴山（13:00）→大白沢山（15:25）→幕営
東電小屋
久保田さんにサポートをお願いし車で送ってもらう。妻と3人で戸倉から入り,鳩待峠経由ヨッピの吊橋まで行きサポート隊とここで分かれる。
ヨッピの吊橋の付近から景鶴山に取り付きたかったが、そこは立ち入り禁止でダメ。東電小屋の裏から尾根づたいに笹山に向かって登山開始。
ナラの樹林のなかを登る。最初のうちは乾いたナラの落ち葉を踏む足音が耳に心地よい。天気も快晴,気分上々で調子よく進む。
しかし登るにつれて潅木が密集し始め木々を分け進むのに苦労するようになってきた。進むことができず引き返すことも考え目印の赤布を見える範囲にうつ。笹山の山頂近くになると古い赤布が２、３見つかり踏跡らしいものが出てきた。その踏跡を頼りに進むが低木の藪に行く手をはばまれすぐに見失ってしまう。
笹山
笹山は小さなピークであった。古い赤布もあった。その近くに自分も新しい赤布を付けた、後から来るであろう人のために、迷い込んだ時のこの赤布を見つけたときはホッとする「助けの神」だ。！
ピークを過ぎるとまもなく残雪が出始めその残雪の上を進む、しかしその残雪はまもなく途切れそこには背丈を越すクマザサの藪が通せんぼをしていた。できるだけ藪の粗いところをねらいクマザサの藪につっこむ。尾根筋を外さないように進むと藪はシラビソの林に変わってきた。
大きなネズコのあるピークを過ぎるとふたたび雪渓があらわれる（高度計1650�叩法△海海浪�適に高度を稼ぐ。1700�檀婉瓩砲覆襪叛齋未呂泙疹辰┷�の藪が私を苦しめる。また低木がうるさくなりそこをくぐり抜けようとするとザックにつけてあるマットとピッケルが枝にひっかりせっかく進んだ分を引き戻される、できるだけ枝の少ないところを選び進むが、低木と木の枝にはばまれとうとう歩けなくなってしまった。
いいかげんに歩くのもいやになりザックをそこに置いて歩きやすいところをあちこち探す。すると西側の斜面に残雪が見える、そこに出てみるとこの残雪はかなり上部まであり景鶴山まで残雪づたいに行けそうに見えた。ホッとしてサックをとりにひき返したが置いたザックの位置がわからない、「チーッ！」舌打ちしながら探しまわってしまった。藪の中に置き去りするときは気をつけなければならないと反省する。
また快適に残雪の登高をはじめる。しかし稜線直下で残雪は切れていた、その先は笹の藪がぎっしり詰まっている、藪に入るのに二の足を踏んでいると、左手にある沢の残雪は稜線まで詰まっているように見えたので、その沢に入り込み沢づたいに登る。案の定、沢筋の残雪は稜線まで私を導いてくれた。
景鶴山
休憩後、松��山への稜線を辿って行くと、山頂まもなくのところで残雪が消え笹薮となるが右手北側に残雪が続いているので北側をまいて進む。
山頂直下で松��山のピークにいくか考えたがそこまでは当然藪こぎだし山頂には何もなさそうなので行かずに巻いて通過する。
そこを過ぎると稜線づたいに歩け藪と残雪を何度か繰り返し進むと景鶴山の直下まで来た。しかし稜線に沿って山頂には藪で進めず右手北側を巻いて進み、左手に大きな岸壁が見えてきた所から上部につながっている残雪づたいに急斜面をあえぎながら直登する。すると残雪は消えさらに5メートルほど登ると稜線で、そこからは踏跡があり景鶴山の山頂に続いていた。
ようやく初日予定の景鶴山についた、時計を見るとちょうど午後1時をさしていた、何と東電小屋から5時間の行程だった。
ここでこれから先の行程を地図と肉眼で確かめる。大白沢山までは稜線づたいではあるが、目で見ると支尾根を２から３つ越して行くような複雑な地形である。天候が良いうちに大白沢山まで行っておいたほうが良いような感じがしてきたで、今日はここまでの予定だったが出来るだけ行けるところまで行っておこうと思い先に進むことにした。
景鶴山からの踏跡はヨッピの吊橋へ下る支尾根に向かってついているようだったが辿って行くと間もなく消えてしまいわからなくなってしまった。残雪に出て進むが、大白沢山への尾根は広く、またシラビソ林の中で展望がきかずどこを目標にして進めばいいのかわからない。少し下りにかかるとなんとなく沢に下っているような感じがして不安でたまらない。しかたなく磁石を片手に進行方向を定めて進む。３０分ほどでカッパ山手前の鞍部につく、ここに来ると展望がきき正しく尾根を歩いていることが確認でき安心する。
カッパ山に着く。（午後2:30）カッパ山と大白沢山の鞍部に来るとシラビソの大木は少なく見晴らしがきく、ここは以前、柳君と尾瀬に春スキーで来ており、そのときの記憶を思い出す。
大白沢山
稜線を辿って進み残雪の切れている所を右手に回り込む。右手下から沢の流れる音が聞こえてくる。雪が融け沢の水が流れているのが見える。この付近が東白沢池付近かと思いながら進む。
間もなく再び稜線に出る。大白沢山手前に藪が切れて大きな草原がある。すぐ近くに雪もあるからここで幕営しようと思い草原に入ってみる、しかしここは稜線上の湿原であり,足を踏み込むと水が浮いてくるような所だった。景鶴山手前で眺めたときは展望も良さそうだし最高の幕営地と思っていたが、残念,幕営は断念しまた登り始める。
大白沢山の山頂は残雪が消えていて５�辰曚負�こぎとなった。山頂には「大白沢山」の標識がシラビソの木にくくり付けてあった。
山頂から先、踏跡が５�辰曚匹△辰燭�それから先はいくら探しても見つからない。下りは鞍部に向かってクマザサの藪こぎとなった。鞍部から少し登りかけた雪原に平坦な所が見つかったので,ここを初日の幕営地とした。
29日（日） 晴れ
幕営地（4:40）→白沢山（5:50）→平が岳（7:05）発（7:35）→剣ヶ倉山（8:45）→1610�段�幕営地（16:15）
3時に起床、
天幕の外に出てみると昨夜の霧はすっかり消えて空には満天の星。今日も天気がいいみたい。「よし!！、今日もガンバルぞ」気合をいれて朝食を取り出発する。
しばらく歩くと東の山並みから顔を出した朝日が今日の行動を励ましているようだ。
朝の雪面はしまっていて歩きよい,しばらく登ると左手に至仏山からの尾根と合流する。ここから見る至仏山は手に取るように近くに見え朝日に照らされ輝いていた。ここを過ぎると尾根づたいに意外とはっきりとした踏跡が出てきた。
白沢山
白沢山まではアップダウンがあったが意外と歩きやすくまた山並みの展望もきき快適だった。白沢山の近くに来ると周りの林からブッポウソウの｢ポッポッポッ｣という鳴き声がこだましていた。
平ヶ岳との鞍部には草原と地塘があり、一休みし昼寝でもしたくなるようなのどかな感じのする所であった。この鞍部から平ヶ岳への登りは残雪の急登、キックステップだけでは滑ってしまう、ピッケルを打ちこみそれを支えにスッテプを作る、その繰り返し,ようやく斜面が緩くなってきたところが平ヶ岳の山頂だった。
平ヶ岳
平ヶ岳の山頂は2年ぶりか着いてみてホッとする、やはり登山ルートのはっきり付いている山頂に立つとひとつの区切りか安心する。
山頂は前回来たときよりも残雪が多い。また前回は霧で何も見えなかったが,今回晴れていて３６０度の展望が楽しめた。越後三山,谷川岳,会津三山、至仏山,そして今回縦走終着の山、巻機山何の障害物も無い。すばらしい眺めを堪能できた。これぞ山登りの醍醐味だ。
平ヶ岳は平原が隆起したのだという。実にもっともらしい平らな山頂だ。大休止をし7:３５分に剣ヶ倉山に向かう。
剣ヶ倉山
平ヶ岳から次のピークまでは牧歌的雰囲気のする草原の中にルートがあった。このピークにはシラビソの木があったが、この先は潅木に変わった。剣ヶ倉山までは岩状のやせ尾根で踏跡も意外とはっきりしていて歩きやすい。潅木はあるが,高さが腰ぐらいまでなのでそんなに苦にならない。
剣ヶ倉山は剣と名のつくように東面は垂直の岸壁でケッコウいい眺めで、見ていて飽きないよい山だった。
しかし山頂はシラビソと笹薮で東面の岩肌とは対称的な感じがした。ちょうど谷川岳の一ノ倉を連想させる眺めであった。
下藤原山
剣ヶ倉山から下藤原山までは踏跡があり背の低い潅木が多かったが歩きやすかった。山頂には三角点があり｢下藤原山｣のプレートが有った。山頂は展望もきき良い山だった。
藤原山
下藤原山を後にし藤原山に向かって下降し始めると背の低かった潅木がだんだん高木化し、踏跡は消え、木の枝が歩行の邪魔をし始めた。最低鞍部に下りそこから藤原山へ登りの所で、残雪の切れ目からの取りつき口が分からない。しかたなく尾根を目標に藪にはいる。木の間をすり抜けながら進むがザックにつけたマットとピッケルが木の枝に引っかかり歩みを止める。枝を払いのけながら悪戦苦闘するが、どうにもならない。しかたなく木の下を通るのを止めて高木は木の上に登り、木から木へ渡り歩く進み方を試みた。するとなかなか良い、ザックが木の枝に引っかからなく進める。まるで猿みたいなもんだ。だが時間をだいぶ浪費してしまった。ようやく高木の藪をぬけるとそこは藤原山の山頂だった。
笹薮で展望も悪く、下藤原山の方が山頂らしく立派であった（標高が下藤原山より低いためだろう）。
藤原山からまた鞍部に向かって下る。一時消えていた藪が再び現れ下るにつれてさらに深くなる。残雪のあるところはできるだけ雪渓に逃げたいが標高が下がっていいるため残雪はすぐ切れてしまうためそこから尾根への戻る登り返しが大変苦労る。したがって雪渓に出るのはやめて藪の尾根を通る。するとまた枝がザックを引っ張る、枝のビンタが容赦無く顔を狙ってくる。
「もうだめ!！」、気力も体力もここが限界,ノビてしまい座り込んで動けない（1610峰）。
しかしこんな藪の中では天幕など張るところなど有るわけないし………しばらくしてふと顔を上げて見ると尾根の東側に残雪がビッシリあるではないか!!。
「よし! ここで幕営」。決めたら何のためらいもない、即実行。藪で木の葉っぱをいっぱい集め,それをテントの下に敷く。今日は温かく快適だぞ。
残雪のクレパスのあるところで雪解け水が流れ落ちていたのでこれをコッヘルに取る。今日は水作りをしなくてすみ、早く食事にありつけた。今日はくたびれた早く寝よう。
30日（月）曇りのち晴れ
１６１０�段�（5:00）→大水上山（6:15）→越後沢山（9:20）→本谷山（11:40）→下津川山（13:50）→小沢山（2:55）幕営
大水上山
1610�段�での朝、天幕から外に出てみると昨日までの好天はなく大水上山には雲がたれこめて山頂は見えない。しかし稜線の見通しはきく、見えれば行動はできる。かえって暑くなくていいやと自分に言い聞かせ,出発の準備に取りかかる。昨日はへばってしまったが体力は回復している。今日の行動には充分耐えられそうだ。
北に伸びている大水上山への稜線には大きな岩峰がある。これを目印に進めば良い。カッパを着て幕営地から稜線に出ると、昨日へばって歩くのがいやになった藪こぎがまた待っていた。藪はうるさいが昨日のような疲れはない,体力にまかせ前進する。岩峰前の鞍部まで藪の中だったがそこから先は痩せ尾根となり歩きやすくなる。岩峰の上部は厳しい直登であった。岩峰のピークから笹薮が続き次のピ−クまでは両側に残雪のある痩せ背尾根を進む。
目の前の岩峰,高度10�辰鯏俘気靴修離圈璽�から20�辰曚豹覆爐箸修海和膺緇綮海領農�の合流点であった。「やった−!！」歓喜の大声を気のすむまで叫び,今日までの行動の成果を一人祝う。
剣ヶ倉山にかかるあたりからこの下の岩峰の雪渓までカモシカの真新しい足跡がずーとついていた。まるで私をガイドするように,しかしその姿は一度も見ることができなかった。
越後沢山
大水上山で少し休憩し丹後山に向かう。途中,丹後山避難小屋から来たという3人パーティに出会う。入山し3日目で初めて出合う人である、懐かしさで声をかける。彼らはきのう十字峡から入り小屋に泊まって中岳を登ってまた十字峡に下るという。私は尾瀬から登りこれから巻機山へ行くのだと話すとビックリした様子だった。
通り道にある丹後山避難小屋をのぞいてみると,二階もあり内部は綺麗だった。水は天水が使えるようにドラム缶に溜めていた。
小屋から縦走路をさらに進み、途中から越後沢山に向かってクマザサの藪に突っ込む。かすかな踏跡らしきものはあったが,それを辿っていると時間のロスになるのでピークを目差し稜線の藪を進む。間もなくクマザサに背丈もある潅木が混じり始め進めなくなる。東側に残雪が出てきたのでそこに逃げ今日1回目の腹ごしらえをする。
元気が出てきたところで残雪通しに越後沢山の山頂まで一気に登り詰める。ここで大休止する。
本谷山
越後沢山の山頂から今日これから行く本谷山,下津川山,小沢山が良く見える。進む方向を目に焼付け出発する。
本谷山への下りは途中まで痩せ尾根で踏跡もはっきりしていて歩きやすい。間もなく岩峰が現れ,この先は今まではっきりしていた踏跡がパタリと消える。いくら探しても踏跡らしきものは見つからない。しかたなく岩峰の東側を鞍部までクマザサの中を下る。鞍部には池らしいものがあったが,表面に水が浮いているが中に残雪が詰まっているのではっきりしない。
ここから本谷山への登りになる。鞍部に下るときクマザサの中に踏跡のようなものが見えたが来て見るとはっきりしないので、東側にある雪渓を登る。雪渓を詰めきった所から稜線に出るため藪にはいる。間もなく山頂かと思われる付近で藪がひどくなり進めなくなる。おかしいと思って少し戻ってみると右手に踏み跡が見つかり,それを進むと間もなく本谷山の山頂についた。
山頂には細い竹筒に赤布が取り付けてあり、背の低いクマザサで覆われた見晴らしの良い山頂だった。
下津川山
本谷山山頂から目前に下津川山その右手に小沢山が並んで見える。下津川山へはかなり下ってからの登り返しである。
本谷山は十字峡から登山ルートがあるためその分岐までは稜線上に良好な登山道があった。特に分岐から十字峡に下る道は下草も刈られたばかりで,なんともうらやましい。下津川山へはこの下山ルートを右に分けて途切れがちの踏跡を辿る。
鞍部までは藪混じりの踏跡を進んだが、そこからは左手の残雪を登り詰める。山頂の下１０�辰曚瓢沈磴論擇譴討い燭�そのまま突き上げ下津川山頂に出る。
山頂には標識プレートがあった。先ほどから湧き始めていた霧が北側の谷間から吹き上げてきて一面見通しがきかなくなってしまった。とりあえず腹ごしらえをし霧の晴れるのを待つが一向にその気配がない。
小沢山への方向を見定めないうちには見通しのきかないルートを進むふんぎりがつかない。しかたない今日はここに泊まるかと観念し、天幕の張れそうな所を探す。だが山頂付近は狭くて適当な所がない。しようがないなぁー、途方にくれていると,ラッキー!。西側の空が少し薄明るくなり霧の中から太陽が薄っすら見え隠れし始めた。しめたと思い周りを見ているとだんだんと霧が晴れてきて小沢山が前面に姿を見せ始めた。小沢山へのルートを素早く目に焼付け出発する。
小沢山
小沢山への鞍部までは急峻な岩峰を進む。最初は痩せた尾根の馬の背を進み、途中から西側をトラバースして進む。ここで真新しいザックに付
属の短いバンドが立ち木に引っかかっているのを見つけた。丹後山からこのルートに入ってから時々見つかる2人ぐらいの踏み跡のパーティが落として行ったものらしい。
最低鞍部に下り立った時は、霧はすっかり晴れ目の前に小沢山のピークが尖がって見えている。ここで一服し、最後の登りにかかる。ここでも稜線を外れ東側の残雪を上る、上部は残雪が切れているのでトラバース気味に東側をかなり回りこむように山頂を目指す。
途中、雪渓の切れ目から融雪水が流れているのを見つけ汲み取ろうとしたが,斜面が急でまた流水量も少ないのでうまく行かない、あきらめる。
残雪が切れて10�辰曚錨个襪肇櫂奪�リ目の前が明るくなり,クマザサに覆われた小沢山の山頂に着く。下津川山の南に小沢山があるのに東側から山頂に突き上げてきたことは、かなり雪渓を回り込んだことになる。山頂には目印らしきものは何もなかった。
山頂からはいま来た下津川山の北、南東及び西南西方向に顕著な尾根が三つ派生している、明日は巻機山に続いている西南西の尾根を辿ることになる。
山頂にザックを置き今日の幕営地を探す。南西方向に少し下がった窪地に地塘のある平地が見つかった。狭かったが一張り専用の最高の場所である。下は枯草で昨日までの雪の上とは違い今夜は暖かく最高の寝心地を約束してくれる。
さて天幕を張ろうとザックを取りにいったが、どうしたことかザックが見つからない。周りをキョロキョロするが無い!。「ヤヤッ」。と一瞬緊張する。ウロウロしても見つからないので、山頂に着いてザックを肩から下ろしたところまでの行動をプレイバックしてみることにした。山頂に突き上げてきた所まで戻りそして登り返す、一番高い所を目指して進むとチラッと赤いものが目に入った。その方向に進むとそれがザックだった。その場所は先ほどウロウロした所から５�辰販イ譴討い覆�った。なんてこった,今回ザックの紛失事件を２回も起こしてしまった。猿でないが反省する!！。こんなミスでロスタイム２０分も食ってしまった。
脇にある地塘の水が使えるか、中をのぞいて見ると水はかなりきれいだが良く見ると底にデンデン虫の抜け殻が見つかり使うのを躊躇する。結局雪から水を作ることにした。
天幕に入り酒を飲みながらラジオを聞いていると、雷の雑音がよくはいる。ニュースでは雷雲が発生し、雷注意報が新潟県に出ていると報じている。
ヤバイナァー,と外を見ると,風が吹き出し霧で視界はゼロであった。風は少し窪地なので心配はないが山頂で落雷にあったらたまらない。しかしラジオの雷ノイズからゴロゴロの音が聞こえてくるまで５〜６秒ありまだ遠い位置にいる。こちらに来ないことを神頼みして眠りにつく。
今日のシュラフは暖かい,雪の上とは違い枯草の上は別天地だ。最高の寝心地で夢の中へ。
31日（火）快晴
小沢山（5:15）→三ツ石山（7:50）→永松山（10:45）五十沢山→牛ヶ岳（13:30）
３時起床、心配した昨夜の雷はたいした事はなかったようだ。外に出てみると風もおさまり空には満天の星ではないか!。「今日が藪こぎの最後の日だ,ヨーシ頑張るぞ」自分に言い聞かせ出発の準備をする。
笹の葉は夜露に濡れびっしょりだ。上下カッパを着て一度山頂に立ち昨日辿ってきたルートを確認する。平ヶ岳,越後沢山,そして昨日泊まろうかと躊躇した下津川山が眼前にデンと位置を構え見えている。
また西の方を見ると,これから行こうとしている山並がよく見える。その奥に今回縦走のフィニッシュの巻機山が我を待っているようだ。今日進む稜線を眼で辿ってみる。三ツ石山,永松山,そして牛ヶ岳。三ツ石山へ下りはうんざりするほど鞍部が深い。その谷は朝日に照らされ、いま立っている小沢山の影が深く長く尾を伸ばしている。
行動開始、下りは踏跡のある笹の中を進む。途中にはいままで見なかった高山植物が咲いている。カタクリ,シャクナゲ,そして朝露に濡れた紫のシラネアオイがひっそり咲いている姿はホーッと心を慰めてくれる。また山桜もあちこちで花を付け春のにおいも香ばしい。
三ツ石山
小沢山からの下りで左手に派生している尾根に迷い混み、高台で見渡すとトンデモナイ方向に進んでいることに気づく。１００�辰曚斌瓩蠅發箸離襦璽箸帽舂�する。三ツ石山は深く下った鞍部を少し登り返したところだった。小休止をとる。
永松山
朝８時を過ぎると朝露はほとんど消えカッパを脱ぐ。三ツ石山からさらに下り最低鞍部に立つ。この付近はお花畑になっている。オヤマリンドウ,コバイケイソウ,キスミレまた紫色の名の分からない小さなお花等、ところ狭しと咲き乱れていている。付近には残雪もあり幕営には別天地のようだ。好天と日程に余裕があればここで一日酒でも飲みながらのんびりしていたいところだ。但しコルのため、通り抜けの風には気をつけなけりればならない。
コルから永松山への登りは最初潅木の悪いルートが短区間続く。その先は背丈の低い笹の中を進む。１６８１�段�手前の稜線から見る永松山の北面は,切れ立った岸壁でその眺めは見るものがあった。ちょうど南アルプス・北岳のバットレスを連想させる立派なものだっだ。
１６８１�段�を過ぎた間もなくのルー上に登山用具がデポしてあった。ビニール袋に入れてあったが袋は破れ中身が見えていた。ザイル、アイゼン,ワカン等のようだった。きっと５月連休に利根川上流八木沢ダムから遡行してきて,荷の重さにバテてデポしていったのだろう。これはもう取りに来ることはないだろう。などと勝手なことを考えながら進む。
永松山の山頂に着けばフィニッシュ巻機山はどんな姿で私を迎えてくれるのか?。東面から近くで眺めるのは始めてだ。期待で胸がときめく。永松山の上部は残雪がビッシリ付いていた。山頂直下にかなり大きな雪庇状の壁があり乗越すのに苦労した。靴でのキックステップではずり落ちてしまうので,ピッケルでステップを切り,１０�辰曚錨个襦�これを越すと斜面は緩くなり再び５�辰曚匹寮稾未鯆湘个垢襪�,三角点のある永松山の山頂に付いた。
すっかり腹が減ってしまったので休憩を取り食事をする。西に見えるピークが牛ヶ岳かと思ったがそれは五十沢岳（トトンボの頭）で,牛ヶ岳はその奥にあり見えない。永松山山頂からの展望は素晴らしい。昨夜泊まった小沢岳,そして西五十沢岳,南に谷川岳,朝日岳,檜倉山,柄沢山,米子ノ頭の山並みが手に取るようだ。
米子ノ頭から東に派生し八木沢ダムに落ちている尾根はスロープが長くよく目立つ。きっと山スキーで米子ノ頭から八木沢ダムに下り,その帰りの登りルートによいと思う。この４月に柄沢山にスキーに行ったときに、米子ノ頭とのコルから八木沢ダムにスキーで下ったシュプールがあった。帰りはこのルートを使ったのかもしれない。
足下には八木沢ダムの湖面が太陽に反射し眩しい。
五十沢山
西五十沢山までは潅木の藪が多く踏跡づたいには通れず,藪の少ない所を選び進むと間もなく山頂で、牛ヶ岳が目の前に大きく迫っている。まるで「待っていたぞ」と招いているようだ。
かなり前になるが,割引山から清水峠まで縦走し,巻機山と米子ノ頭の鞍部でテントの中から眺めたとき,巻機山の右手に大きく見えた山が永松山の山並みで、あの山に行ってみたいと考えたのが始まりで今回の上越国境分水嶺縦走計画のスタートになった。だいぶ長い間温めておいた計画も,今終わろうとしている。
山行定年５０歳を考え,それまでに終わらせておきたかった計画だった（但し,三国山から野反湖はその後追加計画する）。５０歳になる８月まであと２ヶ月だが,今回の山行は実に有意義だった。
牛ヶ岳
五十沢山の山頂から見たときは牛ヶ岳へは踏跡が明瞭に見えたが、鞍部の平原に来ると胸までもあるクマザサの密集がひどく踏跡を辿っているつもりだが進めなくなるほどおびただしい。風這いと呼ばれる所を目標にクマザサを踏みつぶしながら進む。このほうが少しはラクだ。まるで新雪の雪山をラッセルしているようだ。灼熱の太陽に熱せられた草いきれで顔面が焼けるほど暑い,吹き出る汗をシャツの袖で拭きながら目指す牛ヶ岳に向かって突き進む。
風這いの少し小高い岩の上で休憩を取り登りの態勢を整える。風這いを過ぎ少し登ると笹の背丈が低くなり踏跡が出始めた。その方向にルートを求めると足元に水たまりの感触があった。おやっ!。と思い笹をかき分けてみるとそこには幅２０ｾﾝﾁほどの流水がコンコンと流れていた。
｢おお!！、何日ぶりの流水か｣つい声を出し、手で酌んで飲む。手を洗い,顔を洗いさきほどかいた汗を洗い流しさっぱりする。
流水を辿り登って行くと笹藪が切れ湿地の草原が現れその上に残雪が見えた。ザックを下ろしカップを出して湿原の水を飲んでみると「冷たくてうまい!!」。先ほどの水はぬるかったなぁー。などと考えながらたら腹飲む。ポリタンの紅茶を捨てこの冷水といれかえる。少し登ると巻機山,牛ヶ岳間の登山道に出る。そこから１０分ほどで牛ヶ岳の山頂に着いた。
「ウォオー,ウォオー,ついにやったぞ!！」。牛ヶ岳山頂の標識柱に抱きつき、オタケビを２度も上げてしまった。
ノートを取りだしこの感激を書きとめようとしたが、興奮のあまりつらかった事,困ったことなど色々あったがなかなか出てこない。しかたない、小屋に着いてから酒でも飲みながらゆっくり思い出し書き綴ってみよう。
山頂から少し北に進み金城山を眺めようと思ったが,霧が上がってきて、そその姿を見ることはできなかった。
巻機山避難小屋に出発する。今までのルートとは段違いに歩きやすい,その良さを表現すれば車道の泥んこのぬかる道と高速道路の違いがある。今日の凱歌に足取り軽く巻機山に向かう。途中路肩にハクサンコザクラが咲いていた。いかにも今回の成果に捧げんばかりにその濃い赤紫色は目に印象的だった。
巻機山山頂付近の地塘には水がなく涸れ気味だった。どうしたのかな雨が降らずここも水不足か。
小屋には清水から登って来たという単独の若者と２人っきりだった。1人で今回の成果に祝杯し4日間の思いにひたり、酒に酔いしれ,いい心地で眠りにつく。
6月１日（水）快晴
巻機山避難小屋（4:10）→清水部落バス停（6:30）
清水発７時のバスに乗るため小屋を早めに出る。井戸尾根を下り森林帯に入ってから朝日が出てきた。南方に見える黒い針峰が朝日に照らされ周りの景色に際だって目立つ、以前から気になっていたがこの山は大源太山と今わかる。この尾根は水場が１ヶ所もないのに井戸尾根とはどういうことだろう。などとくだらないことを考える余裕も出てきた。
今回の山行で心の思い出に残るのは、むらむらと湧いてくる「やったー!!」という実感と、藪こぎで痛めつけられたベンケイの無数の傷跡だった。
4-1-2巻機山〜清水峠 1987-6-6〜7
1987年6月6日（土） 快晴
清水集落（5:00）→巻機山登山口→ヌクビ沢出合（6:45）→割引岳（11:30）・発（11:50）→牛ヶ岳の分岐→米子頭山手前の鞍部（14:30）・幕営
上越国境分水嶺の縦走と山スキールートの偵察を兼ねて山行を計画した。下山時のことを考えて車は清水集落の奥に置いた。ここから巻機山登山口へ歩く。ここで巻機山へのルートと分かれて割引沢に沿った登山道を遡行する。徒渉点を過ぎ吹上の滝、アイガメの滝を巻きヌクビ沢出合に出る。途中で沢筋に落ちていたカーボン製の吊り竿を拾得する。
ここからヌクビ沢を右に見て割引沢に入る。この辺から雪渓が出てきて残雪の上の登行となった。アイゼンを付ける。斜面は急だが雪面がしまっているから歩きやすい。歩調もいい。まもなく天狗尾根の取りつき点に着いた。雪渓の状態がいいのでこのまま割引沢を詰めて稜線に突きあげることにした。
しばらく急斜面の登りが続く。あと４０ｍぐらいで雪渓が切れそ
こから笹薮を２０ｍも登れば稜線に出る地点で右の笹藪がガサガサと揺れてポンと黒い物体が雪面に飛び出した。何かと見上げると、なんと「小熊」ではないか。見上げた途端に小熊とピタリと目線が合ってしまった。動けない。頭の中ではいろんなことが駆け巡る。逃げるか、睨み合うか、かかって来たらピッケルで戦えるか。５分間も睨み合ったか（実際はもっと短時間と思う）。小熊はヒョイと目線を外し稜線に向かって登って行った。まずホッとした。我に帰り親熊はいないか周囲を見渡す。姿は見えない。そのあと一目散にその場を駆け下る。
逃げ始めた時の気力はもうヘナヘナで登山口に戻る気になっていた。しかし、天狗尾根取り付き点付近に来ると気持ちも落ち着き、ここで縦走を中止するのはもったいない気になってきた。今度はバリエーションルートを止めて、取り付き点から天狗尾根を辿る。割引岳の山頂に着き一息入れる。天気もいいから展望も楽しい。先に進む。
巻機山の山頂付近では地塘が満々と水を蓄え、そよ吹く風に波立っていた。牛ヶ岳への分岐から右の柄沢山に向かう。登山道はそれほど悪くはない。米子頭山の手前に雪田があったのでその脇に幕営した。
今日は割引沢を走って下りすっかりくたびれてしまった。雪解けの冷たい水でウイスキーの水割りをたしなみ目の前に広がる尾瀬の山並みと、眼下に見える利根川源流を眺めながら山旅に思いを巡らす。
7日（日）快晴
幕営地（4:30）→米子頭山→柄沢山（5:10）→檜倉山（6:50）→大烏帽子山（8:10）→ジャンクションピーク（9:20）→清水峠（10:50）・発（11:00）→川原（12:15）→清水集落（13:30）→帰宅
米子頭山から先の登りは少し藪っぽかったがそれほど苦にならず柄沢山に着いた。柄沢山の東斜面はまだ残雪が多く下りのスロープは長くて緩斜面だ。山スキーでは良い滑りができそうだ。またこの手前の米子頭山の東斜面も同じく良い斜面だった。
柄沢山をあとにし檜倉乗越まで続くこの長い残雪の斜面を下る。下る途中、年配の３人パーティに出合った。登ってくる掛け声は大きく元気だが登りの捗らない歩き方だった。
檜倉乗越から登り返すと檜倉山に着いた。山頂付近は地塘のある平坦な所で幕営にもよい所だ。ここで先行を歩いている若い２０代の男に追いつく。彼の若いペースにはまりつい歩調も上がる。大烏帽子岳に着いた。ここから谷川岳方面山並みの展望が良い。また山頂にはもう、チングルマの花が満開だ。
展望を楽しんだあとこのルート最後のジャンクションピークに向かう。下り始めるともう藪の中だ。踏跡はあるが低木が生い茂って登山道を覆っている。胸から首付近まである藪の中を低木の枝を掻き分けながら進む。 足に何か当たった。おや、何だろうと足元に眼をやる。ピッケルだ、拾得する。また少し進むと木の枝に紐のついた方向指示板の付いた磁石が引っかかっている。これもゲット。さらにしばらく進むと今度はチェック模様のシャツが有るではないか。これは乾いている。少し先で同じく藪こぎをしている若い男に声をかける。すると彼は「オレのだー」。持って行ってやる。そんなことをしているうちに地藏ノ頭を過ぎジャンクションピークに着いた。
拾得したピッケルと自分のものとザックに付ける。これで今日の山行は二刀流だ。若い男は朝日岳に行くのでここで分かれる。
清水峠で年配の３人が休んでいたので立ち話をする。そしたら冷えている缶ジュースを１本くれた。よほど疲れた顔をしていたのかな。
清水峠から兼信尾根を下り登川沿いにさらに進むと清水集落に着いた。今回は小熊に出会ったり拾得物があったりと色々なことが多い山行だった。
4-1-3白毛門〜谷川岳 1986-10-24〜26
1986年10月24日（金）晴のち風雪
白毛門登山口（3:00）・発（3:50）→松ノ木ノ頭（5:34）→白毛門（7:37）→笠ヶ岳（9:45）→朝日岳（12:16）→清水峠避難小屋（15:16）・泊
上越国境分水嶺の部分縦走に出かけた。白毛門登山口に車を置き出発する。松ノ木ノ頭付近にさしかかるころから雲行きがおかしくなり吹く風も冷たい。白毛門の山頂で谷川岳東面岩場の展望を楽しみ先に進む。
笠ヶ岳を過ぎた付近から登山道に積雪が出始め雪もチラホラ降り出してきた。朝日岳の山頂に着いた時は風雪になっていた。山頂で付近を散策していると後続から３０代の男が登ってきた。寒くなってきたので山頂をあとにし清水峠に下り避難小屋に入る。
小屋は２段ベッドで８人ぐらい泊まれるようだが今日の宿泊は若い男性と２人だけだ。ベッドに天幕を張りストーブで温まり晩酌をしながらの夕食だ。
25日（土）快晴
清水峠避難小屋（6:30）→七ツ小屋山（7:40）→蓬峠（8:25）→武能岳（9:50）→茂倉岳（12:30）→一ノ倉岳（12:50）・幕営
朝、外に出ると空は満天の星だ。朝食の準備をしていると隣の男性も起きてきてきて、昨夜は寒くて眠れなかったという。夕食事も寒がっていたのでツエルトを広げてストーブを焚くといいと教えてやったがやらなかったようだ。彼は夜明けとともに小屋を出発して行った。
朝食を済ませその後につづく。七ツ小屋山で一息入れ山望を楽しむ。今日行く予定していた大源太山は新雪をかぶり黒い岩峰が天にそそり立っている。上州のマッターホルンの異名もうなづける。しかし、積雪も多いので登頂は中止した。今立っている山頂も積雪２０ｃｍはある。
山頂を後にし蓬峠を過ぎ武能岳を登り返す。山頂で一息いれ先に進む。茂倉岳の登りにかかると先行の男が登りに苦労している。積雪が多くなり深い所で３０ｃｍもある。トップを交替しラッセルを続け茂倉岳の頂きに着く。ここで小休憩して茂倉避難小屋に向かう。
その時、彼いわく。今日は一ノ倉岳の頭で幕営したいという。「どうぞ」というと、彼は一緒に幕営して欲しいという。イヤなことだ！。断る。夜中に風でも出てきたらたまらない。しかし彼は是非。ということで話しはおれて一緒に一ノ倉の頭での幕営に同意してしまった。積雪は２０ｃｍぐらいあった。ドームの避難小屋は扉が壊れ雪が詰まっている。もしもの事と思い、雪を掻き出してみたが大変な苦労であきらめる。小屋の脇に２張り幕営した。幸い風もなく穏やかだ。このまま朝まで続くことを願って天幕に入る。
夕方、外に出てみると素晴らしい雲海だ。一面が雲のジュウタンを敷き詰めたようだ。その中にオキの耳、苗場山と今、自分が立っている一ノ倉の３峰だけが黒く頭を突き出している。まさにメルヘンの絵のようだ。雷様のように雲の上に乗っているような気分になってきた。
26日（日）晴
一ノ倉岳（8:00）→トマノ耳（9:00）・発（9:30）→西黒尾根→白毛門下山口（12:20）→帰宅
目が覚めると外は静かなのでホッとした。外に出てみると今日も空は満天の星だ。一ノ倉岳の頭で日出を迎える。隣のあんちゃんも出てきて明け行く谷川岳のシーンを楽しむ。その後、彼は礼をいい谷川岳に向かって出発して行った。
私は清野が谷川岳に来ると聞いていたので待つ事にしゆっくり出発した。トマノ耳に着くと数名の登山者がいたが彼の姿は見当たらない。9時半まで待ってみたが来ないので諦めて下山し、帰宅の途に着いた。
4-1-4-1三国山〜谷川岳 1967-7-1〜2
●三国山〜平標山〜万太郎山〜谷川岳
1967年7月1日（土）曇
後閑駅（14：50）→三国峠（16：30）→大源太山（18：15）→平標小屋（19：00）
予定大源太には水場もなく天候悪い為小屋まで行く。雨の中ツエルト泊。
2日（日）雨
平標小屋（3：30）→平標山（4：00）→仙ノ倉山（4：40）→万太郎山（7：25）→大障子避難小屋（9：30）・発（9：55）→オジカ沢の頭避難小屋（10：40）→肩の小屋（11：45）・発（13：20）→天神避難小屋（14：30）→ロープウｴー駅（15：50）→土合駅（16：35）・発（18：53）
万太郎を越した頃より天候悪化、雨まじりの強風。大障子小屋で気象予報を聞き回復の見込みがない為縦走中止で半分の地点、肩の小屋より厳剛新道を下山することに決定。
オジカ沢の頭より小暮疲労の為行動困難となる。肩の小屋でしばらく休むが歩くのは無理な様なので、メンバー交代で背負って天神尾根を下りロープウエーで土合へ下山することに決定。なお当人は女性三名を連れ先に下山し天神避難小屋で待ち合わすことに決定。矢板橋ら五名は交代で小暮を背負って下山。20分後には自力で歩ける状態になる。小屋には先に下山した佐藤一行がいない。ロープウエー駅かと思ったがここにもいない。係員に問うたらそれらしき者が下った様子なので後を追う。が、土合駅にもいない。Ｕ氏、Ｊ氏を残しＫ氏、Ｋ氏、Ｔ氏はロープウエーが5時で終わった為田尻尾根より天神小屋へ向かうことに決定。5時10分土合行きの最終バスに当人一行がいるのを認める。全員無事なことを確め合い、ずぶぬれの姿であわや発車寸前の列車に飛び乗る。
今回の山行は、悪天候の為予定の縦走を成し遂げられなかったのは非常に残念であり次の機会に是非実現させたい。今回は反省すべき点がかなりあると思われる。これを良き経験として今後の行動に生かせれば幸いである。
4-1-4-2谷川岳〜三国山 1987-10-31〜11/2
●谷川岳〜万太郎山〜仙ノ倉岳〜万太郎山〜三国山
1987年10年31日（土）
土合（7:00）→西黒尾根登山口→肩ノ小屋（10:40）→トマノ耳・往復→肩ノ小屋（11:30）→オジカノ頭（12:40）→大障子避難小屋（13:35）
同じ行程（逆行程）だが再度記入した 同行者：Ａ氏
上越国境分水嶺の縦走にＡ氏と２人で出かけた。土合駅前に車を置き出発する。初日から生憎の曇り日だ。西黒尾根を登る。ラクダノ背付近では谷川岳山頂付近では雲が垂れこめ展望なし。ザンゲ岩を登りきった頃からボツボツ雨が落ちてきた。肩の小屋に入り、トマノ耳に立ったときには霧雨で視界なし。小屋で一休みしオジカノ頭に向かう。オジカノ頭を過ぎるころからみぞれ混じりの風雨となってきた。２人とも無言のまま先を急ぐ。
霧の中にポツンと見えたのが大障子避難小屋だった。すぐ中に入りこむ。小屋は新築されこぎれいになっていた。湯を沸かし腹ごらえをするとやっと落ちついてきた、ひと休みする。
水場は小屋から南側の赤谷川に下った所に有り、１５分ほどで往復できた。その夜は酒を飲みながら２人で山談義。午後４時の天気図をとると明日は晴れそうだ。期待しシュラフにもぐり込む。
11月1日（日）晴
大障子避難小屋（6:40）→大障子ノ頭→万太郎山（7:50）・発（8:30）→エビス大黒ノ頭（10:30）→仙ノ倉山（11:50）→平標山（13:35）・幕営
朝、小屋の外に外に出て見ると昨日の悪天がうそのように晴れ渡っている。登山道脇の草の葉に付着した水滴が凍って白くなっている。温度計を見ると−２℃を示していた。朝食を済ませ平標山に向かって出発する。大障子ノ頭で一休みし山望を楽しむ。登ってきた東側には谷川連峰の山並みが並んでいる。谷川岳の双耳峰、その左に一ノ倉岳、茂倉岳とつづく。逆光の朝日に照らされシルエットが浮き上がって見える。
先に進む。まもなく万太郎山に着いた。ここの展望も良い。西に谷川岳山塊の最高峰の仙ノ倉山やエビス大黒ノ頭そして北東には茂倉岳から延びる茂倉新道のある尾根が魚野川にその裾野を下ろしている。腹ごしらえをし一息入れたあと先に進む。
毛渡沢乗越まで長い下りが続く。途中にあるカマボコ型の避難小屋は床に乾いたクマザサが敷いて居心地良くなっている。以前、来た時は中が田んぼのような泥沼だった。直してくれたのだろう。乗越を過ぎると再び登り返しになりエビス大黒ノ頭を通り仙ノ倉山えと続く。仙ノ倉山からクマザサ帯を通り平坦なお花畑へと続く。さらに進むと平標山に着いた。
今日は天気も安定しているので山頂に幕営することにした。西方向には夕日に染まる苗場山の特徴ある傾き、その左手に佐武流山、白砂山が並びさらにその奥に志賀の鳥甲山、岩菅山、横手山、本白根山とウイスキーを片手に２人の山談義は止まらない。
2日（月）晴
平標山（7:00）→平標小屋（7:30）→大源太山・往復（8:07）→三国山（9:10）→三国峠登山口（10:15）→浅貝バス停（10:50）・発（11:14）→バス・湯沢駅（11:58）・発・電車（12:15）→土合
風を避け天幕をクマザサに一杯寄せて設営したが山頂は風の通り道だ。夜通し天幕は揺さぶられつづけた。今日も天気はいい山頂の朝焼けを満喫しゆっくりの出発だ。平標小屋で体調を整える。小屋のキジ場を使わせてもらう。ガッチリした作りで扉が鉄製だ。閉めると中が真っ暗闇で何も見えない。不安になり少し開けて使う。これでは日中もヘッドライトが必要だ。小屋の前には飲料水が引かれて流れていた。水は笹穴沢の上部から引いていた。
先に進む。大源太山の分岐にザックをデポし往復する。登山道は樹林の中だが山頂は見晴らしが良く仙ノ倉山や三国山が良く見えた。三国山は巻き道も有ったが山頂に向かう。
三国山の山頂で縦走路最後の展望を楽しみ三国峠に下る。峠には三国権現があり山行の無事終了を祈願する。峠道は群馬県側と新潟県側に続いていて、新潟県側に下る。途中、浅貝川に流れこむ湧水があった。登山口に下り立ち国道17号を歩き浅貝バス停へ。バスで湯沢駅へそこから電車で土合駅に行き車を回収し家路に着いた。
4-1-5三国峠〜白砂山 1995-5-25〜28
三国峠〜稲包山〜地蔵の頭〜白砂山〜野反湖
1995年5月25日(木) 晴れ
三国山登山口(5:50)→三国峠(6:20)→長倉山(7:20)→キワノ平ノ頭(9:25)→ 鉄塔(10:25)発(10:35)→稲包山分岐(12:00)→稲包山山頂(12:15)・発(12:30)→三坂峠(14:30)・幕営
車で家を出たのが午前3時、三国トンネル新潟県側の駐車場に着いたのが５時頃だった。いつも上越に来る時に通る道順で定刻
に着いた。朝食をとり出発の準備をする。天気は晴れで今日は持ちそうだ。予報では今日は持つがその後は崩れるといっていた。
三国峠に行く途中に三国権現の湧水があり,いつもと同じようにコンコンと涌き出ている。これが魚野川の源流か?。三国峠にある三国権現の社前で今回の安全登山を祈願する。周りを見るがこの付近には誰もいない。
身支度をし藪こぎの心構えをきめ長倉山の登りに足をむける。すぐ近くの鉄塔までは道があったがその先は今まで読んだ山行記録通り笹薮になっていた。藪はそれほどひどくはなかったが登りがきつい、とにかく稜線を目指し直登する。30分ほどで稜線に辿りつく。稜線は痩せていて踏跡が出てきた。そこからは長倉山が見える。シャクナゲの咲く稜線を進むと右手に鉄塔が見えてきた。間もなくシャクナゲが今は盛んと咲いている長倉山の山頂に着く。
山頂には[KWV]の標識プレートが木にくくり付けられてあった。このプレートから西に稜線を辿り下り切ったところに一つ目の鉄塔があった。遠くから見るとたいした事はないがその下に来ると実に高い巨大なものだった。
そこからキワノ平ノ頭までは笹状の藪がひどく時々登る足を止めさせられる。藪を避けるため右側の樹林の中にはいると,斜面のため足が滑りこちらも歩きづらい。結局藪を掻き分けて登る方がまだよい。キワノ平ノ頭には残雪がありここで一服、腹ごしらえをする。
南西方向に稲包山とその右に西稲包山がまだ遥か向こうに見える。心配していた天候も回復し、太陽が出始めた。今回の縦走は見通しがきくのが何よりも力となるため,心強くなる。
キワノ平ノ頭を下り始めると間もなく,すごく密集した笹藪となり、下りなのに前に進めなくなることが度々ある。賢明に笹を掻き分ける藪こぎのラッセルをしていると、突然｢ガサーッ｣という音に「肝」をつぶす。クマか!!。音の方向を凝視する。何も見えない。しかし,さらにあたりを見回す。すると再び「ガサーッ」と音がする。その方向を見ると,猿の親子連れ3匹が,向こうもビックリしたのかこっちを見ている。ホッとした瞬間「コノヤロー」と思い,精一杯でかい声を張り上げる「ワーッ」この声に猿どもはおののき,上越側の谷にいちもくさんに逃げ込んだ。それを見てあらためてホッとする。
間もなく二つ目の鉄塔に着く。鉄塔の付近は手入れがよく下草はきれいに刈り取られている。
実に歩きやすい。気分よくキョロキョロしながら歩いていると、何か足元が「へん!!」。視線を足下に移すと,なんと蛇を踏んでいるではないか。飛び上がらんばかりに驚き一目散にその場を逃げる。跡でその光景を思い出すと,なんとなく蛇も気の毒だった。きっと日向ボッコでもしてしていたところだったのだろう。何となく合った目が恨めしそうだった。
そこからまた笹藪となる。最初の登りは大木があり案外歩きやすかったが,その先が平坦地となり,潅木と笹藪が背丈を越し踏跡は全く消えてしまった。何度も進めなくなりひき返しては藪の薄い所を探すという方法で進む。距離は遅々として進まず、風はなく,蒸し暑さと笹から出る白い粉で息が詰まる。この苦しさをなんと表現すればいいのか。
ようやく尾根も痩せてきて進行方向も見えるようになってきた。稲包山の山頂に向かう付近から踏跡が出てきた。この付近が三坂峠に行く分岐点らしい。
ザックを分岐点にデポし山頂を往復する。ザックのデポ地には赤布で目印をした。（昨年、小沢山でザック探し事件の反省）
稲包山の山頂付近はシャクナゲがちょうど今盛りと咲いていた。稲包山から四万方面へは立派な登山道があった。
三坂峠に浅貝方面からの踏跡があると記録にあったので付近を捜してみたがそれらしいものは見つからなかった。峠の鞍部に天幕を張ろうと思っていたが,そこは胸から上の笹薮でとても張れそうもない。そこから上越側に少し下った大木の下に狭い平坦地を見つけそこに幕営する。水はこの下チョウチン沢に下り5分ほどの所に雪渓からの流水があった。
26日（金）天気：晴
三坂峠（5:35）→１８００�段�（9:00）発（9:15）→笹ノ平（10:05）発（10:25）→セバトの頭（10:40）→地藏ノ頭･稜線上（12:25）→上ノ倉山（13:10）→忠次郎山のコル幕営（13:40）
朝,幕営地を出発するときはみごとな朝焼けで天候はまあまあ。しかしこの朝焼けだと一日持ってくれるかなぁー、と心配しな
がら出発する。
最初のピークを少し北側を巻き北東に向かって稜線づたいに下る。笹藪が切れ歩きやすくなった。次のピークから尾根は北方向に伸びている踏跡らしきものがある。何となく方角は左手のようだが稜線に沿って下ってみる。しかしこの尾根はどんどん北に向かって下るのでどうもおかしい,地図を出して確認するとこれは越後側に下っていいる支尾根のようだ。踏跡に見えたのはけもの道らしい。最初思案した所までひき返し左手の窪地の方向に進む。すると笹藪がコメヅカの林に変わり踏跡も出てきた。このルートでよかた。支尾根を下ると大変反省する所だった。Good Good!!。（自分でこの場所を迷いピークと名づけてみた）、記録にあるコメヅカの切り開きの部分らしい。
１８００�段�付近はまさに奥秩父か南アルプスの雰囲気を思い出させるようなクロビソ林のコケのある登山道であった。このピークで一服。今朝,心配した天気も快晴に変わり暑くなってきたが,ここは日陰で風通しもよく気持ちがいい。
１８００�段�から笹ノ原までは多少の登りはあったが,栂林に笹薮のある平地続きであった。笹は腰より少し高い程度で,踏跡はなかったが道標があり意外に歩きやすい。間もなく栂林が終わり,一面笹の笹ノ原に着く。見晴はよく,そよ風は吹いていて気分が良い。窪地には残雪もあり幕営するのに水の心配はない。
計画ではここで幕営の予定だったが,それには時間がまだ午前１０時５分と早いし天候もよいのでさらに進むことにした。笹ノ原から栂林に入ったところから残雪が出始め残雪通しに歩けた。この先のセバトの頭は目立たない笹薮のピークであった。
これからムジナ平への下りだが,栂林で残雪も多く目標の山並が見えず進行方向が定められない。磁石を頼りに進む,少し右によっているような感じだったので左に方向を変えたらどうも沢に下っているみたい。元の位置までひき返し,進行方向を修正し正規のルートに戻った。
ムジナ平は迷いやすいと記録にあり心配していたが、一度進行方向修正があったが無事に通過することができた。
上ノ倉山へ続く稜線への登りは急斜面の笹藪で、笹につかまりまるで岩場の草つきでも登っているようだった。ようやく地藏ノ頭に着く（高度計表示:２１５０�叩法�
『日本山岳会越後支部 新潟県境全山縦走踏査 創立２０周年記念
群境縦走 S５６‐７‐２５〜２６ 草津あるこう会』
地藏ノ頭の大木には上記のプレートが取り付けてあった。
ここから進路を南西方向にかえ稜線に沿って上ノ倉山へと向かう。山頂付近は目印がしっかりしていたが,笹藪ばかりだった。上ノ倉山の山頂から下り始めたら心配していた雨が落ちてきた。
忠次郎山との鞍部に着いた時はもう雨は止んでいた。ここに幕営する。適当な平地が見つからず雪渓の切れた笹の上にテントを張る。平らな所が見つからず雪渓の上にテントを張ろうと思ったがそうしなくてよかった。夜中に冷え込み眠れず２度も起きてしまった。雪の上だったら眠れなかったかもしれない。水は近くで雪渓からの流水を取った。
テントの中で酒をたしなんでいたら急に外が明るくなった。外に出てみると見事な夕焼けだ。今までこんな素晴らしい茜を見るのは初めてか!!。心ゆくまでプレリュードを楽しむ。明日は天気がいいみたい。
27日（土）快晴
幕営地（5:50）→赤沢ノ頭（6:55）発（7:15）→上ノ山（7:50）発（8:30）→三国境（9:30）→白砂山（9:40）発（10:50）→
久保田の他。3名と合流
２人は八間山分岐（13:15）→八間山山頂（2:50）発（3:00）→野反湖湖畔（3:40）
他の２人は八見山に行かず野反湖に下った。ｌ
昨夜は寒かった。あまりの寒さに２度も目が覚めてしまった。着ているものをみんな着こんでやっと眠りにつく。
夜が明けて来たので外に出てみると案の定、,空には雲一つない快晴だ。天幕の外張りは外気と内部の湿気が凍り付きバリバリになっている、寒いはずだ。
今日は縦走の最終日、そして上越国境分水嶺縦走の総締めくくりと思うと気が引き締まる思いがする。がんばって安全に行こう。下界からは、久保田の他２名がサポートに来ることになっている。今回の終局を祝ってくれるような快晴だ。もしかするとサポート隊もこの天気にひかれ白砂山の山頂まで来るかもしれぬ。
忠次郎山の登りは残雪がありこれを辿って山頂に行けた。山頂には「忠次郎山」のプレートが栂の木にくくりつけてあった。山頂からはこれから行く赤沢ノ頭,上ノ間山そして右手に白砂山がよく見える。
忠次郎山から進路を少し東に向け稜線沿いに下降する。たいしたピークもなく赤沢ノ頭につく。この山頂にもプレートがあった。
なんとこのプレートは３５年間もこの姿を維持していたのだ。何人の登山者の目印になったことか、有難いものだ。
ここから小高いピーク一つ越すと上ノ間山に着く。赤沢山から上ノ間山の間の稜線は痩せぎみで踏跡も所々あり、笹の背丈も低くなり割りと歩きやすい。
上ノ間山の山頂からの展望は実によい。天気も快晴,気分は最高,東方面には稲包山がよく見える。 今回通ってきたルートが手に取るように一望できる。シャクナゲの咲いていた稲包山、三坂峠の鞍部、笹薮多かった笹ノ平、そしてムジナ平、またその奥には筍山の電波塔も見える。視線を北西に変えると、苗場山そして三国境（長野県、新潟県、群馬県の県境）からそれにつながる稜線上に佐武流山が大きくそそり立っているように見え何か「こっちに来い」と招かれているような気分にひかれる。今日の終着点白砂山も手前の稜線上に頭を出している。
上ノ間の山の山頂には小さな木造小屋の倒壊した跡があり、沢から遡行してきた人たちが利用したものだろうか?
存分に山頂の展望を楽しみ白砂山へ向かう。小ピークを越え三国境につくと苗場山に向かった足跡が雪面に残っている。一時間ほどの前のものか新しい。その辺に誰かいるのかと思い１００�辰曚鰭直貉海諒�の藪に入ってみた。けれど人影は見当たらなかった、元にひき返し進むと間もなく白砂山の山頂に着いた。
「ヤッターッ、白砂山だ!!」。今回三国峠を出発し今まで何回この言葉が頭をよぎったことか。遂にやった。尾瀬沼から始まる上越国境分水嶺踏破遂に終局の白砂山だ。そのピークを今この自分の足で踏んだのだ。この思い実に「感無量」というところか!!。時間がたつにつれじわじわ胸の底から湧いてくる抑えようのないこの感動,これを「満足」というものか。
今夜,終着の野反湖でビールでも飲みながら「ウメーッ」を連発し、サポートで来るはずの久保田を合わせ３人で山の楽しさを語り合おう。
山頂に午前９時４０分に着き、もしかしたら白砂山の山頂まで来るかも知れないサポート隊を１０時５０分まで待ったが来そうもない。山頂で感動の出会いをしたかったが残念、登ってくるルートを見てもそのような人影はないし下山することにした。
下り始めて２５分向こうのピークの奥から話声が聞こえる。その方を見ると山陰から久保田を含め３名が顔を出す。やはり来てくれたか!！。硬い握手をし今までの事を語り合う。
久保田と他の一名の両名はその上の白砂山へ、他の１人と自分はここでくだらない話をして両名が山頂を往復してくるのを待つ。２人が山頂から降りて合流し野反湖に下る。
八間山の分岐点で,久保田と自分は八間山へ、他の２人は登ってきた道を下る。そして２つに分かれたパーティは各々野反湖湖畔に下り、先に下った２人の駐車場に置いてある車で自分たちを迎えに来て合流した。
その後は温泉の上にある駐車場で祝宴となり,残雪で冷やしたビールで「ウメーッ」の連発で、その後の記憶なし。
4-2越後三山縦走 1987-8-14〜17
枝折峠〜甲斐駒ケ岳〜中ノ岳〜八海山〜大崎
1987年8月14日（金）曇
湯沢駅（2:35）・発（6:22）→小出（7:07）・発（8:45）→バス・新枝折峠（9:55）
新枝折峠（10:00）→小倉山（12:14）→駒の小屋（14:00）・泊→駒ケ岳・往復
縦走のため交通機関は電車、バスを乗り継いで新枝折峠に降り立った。準備を整え登りにかかる。旧枝折峠にある明神の祠で
安全登山を祈願し先に進む。尾根伝いに登って行くと小倉山に着いた。ここで駒の湯から登ってくるルートと合流する。駒ケ岳の姿が見えてきてさらに岩峰を登りきると駒の小屋に着いた。
ザックを小屋に置き駒ケ岳を往復する。山頂からは明日行く予定の中ノ岳や八海山の山並みを見ることができる。小屋の前から山頂にかけて一面がお花畑でアキノキリンソウやその他の花が咲いていた。
小屋には管理人がいて使用料￥700。２段ベッドで１５人ぐらいの収容か。水場は小屋の裏に流れていた。
夕食前の小屋前で管理人のおやじの話。
以前に山中で怪我をした小熊がいて助けてやった。今でもその熊はこの付近にいて呼ぶと出てくるという。その時は手渡しでキャベツを玉ごとくれるんだそうだ。また荷揚げで山を登っている時はロープをかけて引いてくれるという。メルヘンのような話しだが信頼度を５分以下として聞いていると楽しい。
小屋の中で夕食の晩酌をしていると隣にいた年配の夫婦がガスストーブに火が点かないと困っていた。私のストーブを使わせてやる。
15日（土）曇
駒の小屋（4:30）→中ノ岳避難小屋（8:00）・発（9:10）→兎岳（11:00）→大水上山（11:40）→中ノ岳避難小屋
駒の小屋の管理人は中ノ岳に行く登山道は荒れていて５時間半はかかると言っていたが、荒れている所はなかったし、３時間半ほどで中ノ岳避難小屋に着いた。小屋の中はきれいになっていて毛布も供えてある。水場は祓川まで下るが小屋の前にドラム缶が備えてあり天水を使うことができる。また高校生らしい宿泊者がいて蝶を採取していた
。
小屋にザックを置いてナップザックで大水上山に向かって出発する。中ノ岳付近は岩でゴツゴツした登山道だが兎岳付近に来ると雄大な草原になった。吹く風も肌に心地よく昼寝でもしたくなる気分になる所だ。花は小兎岳の登りで大きなウサギギク、そして兎岳手前のお花畑にはエゾコザクラやアキノキリンソウが咲き乱れている。
その先の利根川源流の大水上山まで足を延ばした。そこへ八木沢から沢登りをしてきた４人パーティが登って来た。中ノ岳避難小屋に引き返す。
天水を使い夕食の準備をしながらウイスキーを飲んでいると４、５人のパーティが入ってきて彼らも酒盛りが始まった。日が暮れてしばらく経ってからさらに１名入ってきて仲間入りし、さらに話し声が大きくうるさくなってきた。明日の朝は早いので寝る。
16日（日）晴
中ノ岳避難小屋（4:30）→祓川（5:00）→オカメノゾキ（6:10）→荒山（7:40）→五竜岳（8:10）・発（8:30）→八海山・薬師岳（10:00）発（10:30）→霊泉小屋（13:00）・泊
朝、朝食の準備をしていると昨夜遅く小屋に入ってきた男がウンウンうなっている。どうもこいつ二日酔いらしい。疲れ切った身体に、遅く来て酒をあおったせいだろう。
日中は暑いので早めに小屋を出発した。御月山手前鞍部にある祓川の水場は湧水できれいなせせらぎだ。飲むと冷たくてうまい。そこから登り返し、登り下りの多いやせ尾根がしばらく続く。その先のオカメノゾキで足を滑らせ転倒してしまった。前のめりになり2回転もしてしまう。幸いけがはなかったが気をつけよう。
荒山を過ぎ五竜岳でひと休みしていると中ノ岳避難小屋にいたメンバーが後からやってきて彼らも休んだ。そしたら悪酔いした人の話題になっている。気になったのでその人はどうしたか聞くと「小屋に1人置いてきた」という。唖然とした。いくら二日酔いだろうが、一人にしてくるとは！。こんなメンバーとは付き合いたくないなぁ。
ここから阿寺山との分岐を八海山に進む。入道岳の登りは急登で辛い。「クソ入道」と叫びたくなる苦しさだ。
八海山の主峰、薬師岳に登り一休みする。東には左から駒ケ岳、中ノ岳がかたち良く並んでいる。北方向には阿寺山が緩やかな裾野を広げ居座っている感じだ。西の眼下には六日町の下界が広がっている。
今夜の晩酌の酒が不足していたので千本檜小屋でワンカップ２本調達、￥650×2本 ちと高いな。
下りにかかる。女人堂の上部にある祓川の水は少しよどんでいる。飲料水に使うには勇気がいる。四合目を過ぎ八海山スキー場のゴンドラ山頂駅を過ぎると大崎方面の通行者はめっきり減った。みんなゴンドラを使うのだろう。霊泉小屋に着いた。
少し時刻は早いが今日の行動は終了。下界の暑さをもう１日ここで避暑する事にした。小屋の下に湧き水が出ている。冷たくて実にうまい。水温を計ると６℃。小屋には毛布が備えてあるがすこしオンボロ。また床にゴザも敷いている。日が暮れて酒をたしなんでいると遠くに花火の音がする。外に出てみるが大輪は見えなかった。寝る時、雨の音がする、だが小屋の前は降っていない。なんと湧水の出ている沢の部分的な雨だった。
17日（日）晴
霊泉小屋（6:50）→八海神社（7:10）→大崎（7:50）→五日町駅（8:45）・発（9:26）→電車
朝、ゆっくり出発し帰路に着いた。反省点：非常食に持っていった大福はカビが生えて食えなかった。またボンレスハムもコンパ時に食おうとしたが悪くなっていた。これからのメニューから外す。
4-3頸城三山縦走 1990-6-2〜5
妙高山〜火打岳〜焼岳〜雨飾山
やっと、念願だった頸城三山縦走をする時がきた。妙高山から雨飾山まで歩く
1990年6月2日（土）晴のち曇
燕温泉（6:00）→天狗平（9:55）→妙高山（11:35）→高谷地ヒュッテ（15:10）幕営
燕温泉に車を置き燕登山道を登る。途中から残雪が出てきて北地獄谷の残雪の上を進む。天狗平に曲がるポイントを見落としてかなり上まで登ってから詰まり引き返す。やっと、それらしい踏跡をみつけてそれを辿ると赤倉登山道から来る道と合流した。そこが天狗平だった。そこからは尾根筋の登山道で残雪もなくなり歩きやすい。しばらく登ると妙高山の山頂に着いた。
山頂の展望を楽しんだあと、高谷地に向かって下る。少し進むとまた雪野原となった。そのうち霧が出てきてルートが分からなくなってしまった。赤布も殆ど見当たらない。地図と磁石のニラメッコでのルートファイテングとなった。
でも、ルートの要所には夏道の標識が雪面から頭を出しているのでこれを見逃がさないように進む。
そのうち前方に黒沢ヒュッテがぼんやりと見えてきてほっとする。そこから西に進むと間もなく高谷地ヒュッテが見えてきた。
ヒュッテ脇に幕営し、濡れた靴下を履き替え靴を乾かす。夕食を終え外を見ると西の空が茜色に変わり始めている。急いで外に出ると目の前は大パノラマだ。先ほどまでくさっていた気分が一転した。右手から火打山、焼山、金山の山並が茜色の空に浮かんでいる。「今見ないとあとは見せないよ！」とばかりに。両手にカメラとコーヒーカップを持ってその夕照のショーを楽しんだ。
3日（日）晴
高谷地ヒュッテ（4:50）→火打山（6:10）→焼山（9:00）→富士見峠→金山（12:00）→大曲（14:00）発（15:20）→雨飾山・笹平（16:10）
朝起きて、ストーブに火をつけ外に出て見ると満天の星空だ。朝食をとり身体を温めてから、天幕を撤収し火打山に向かう。火打山の草むらで青空に浮かぶ妙高山を見ながら大キジを打つ。なんとも爽快な気分。
雲ひとつない青空の火打山からの展望は素晴らしい。南東に妙高
山、その右に黒姫山、さらに右に戸隠山が並ぶ。そして、戸隠山の手前に高妻山と乙妻山が見える。また、南の眼下には笹ヶ峰貯水池の水面が光っている。そして西にはこれから行く焼山は噴煙を上げてその猛々しさを誇示し、その左肩に雨飾山と金山が控えている。見ていると過ぎ去る時間を忘れさせる。
焼岳の縦走路に足を踏みいれるとき多少の不安が脳裏をよぎる。いや、期待感が大きかったと思う。（登山禁止区域）しかし、向こうに見える雨飾山への気持ちに背中を押されて前に進む。
胴ぬき鞍部から焼山への踏跡をいくら探しても見つからない。しかたなく、正面から山頂に延びている大雪渓を直登する急斜面の直登は辛い。キックステップでは登れなくなりアイゼンをつける。３０歩登りひと休み、３０秒登ってまたひと休みのインターバル登行だ。歯を食いしばり、あえぎながら登る。間もなく雪渓は消え砂礫となる。頂上直下で道しるべの赤ペンキを見つけた。それを辿るとじきに山頂に着いた。
足元から噴煙が噴き出している所が数個所あった。風向きが変わると煙をかぶる。そのうち喉が痛み始めた。
焼山の頂上は噴煙からは離れているが、風向きも変わるのでアイゼンを外し早めに富士見峠に下る。富士見峠はお花畑でハクサンイチゲ、カタクリが群生していて足の踏み場もない。
金山への登りは残雪が多くずーっと雪上歩行となった。日焼け防止のマスクをつける。金山からルートを西に折れシゲクラ尾根を下る。茂倉峰に近づくと残雪も少なくなり歩きやすくなった。登山道沿いにはちらほらタムシバの花が目に付く。
大曲の水場でポリタンに５リットルの水を詰めザックにつける。へばっている身体にジスリと重い。ところがここから雨飾山に登る道が見つからない。やっと探し当てるのに１時間もロスってしまった。
雨飾山の登山道は急に道幅が狭くなり水路のような悪路だ。やっと登りが平坦になるとじきに笹平に着いた。登山道の片隅に幕営する。ようやく重いザックに開放され空身で雨飾山を往復する。
4日（日）晴
BC→雨飾山往復→笹平（5:50）→小谷温泉（8:50）発（10:50）バス→南小谷駅（11:26）発（11:30）大糸魚線→糸魚川駅（12:23）発（12:39）→直江津駅（13:18）発・急行（13:38）妙高高原駅（14:14）発（15:25）バス→燕温泉（15:58）・車→戸隠キャンプ場。・幕営
昨夜、頸城三山完走の喜びの酒で早めに寝ついたせいか快調な目覚めだ。再度、雨飾山の山頂での展望を楽しむ。白馬三山の白い頂きが朝日に照らされ茜色に染まって行く。朝焼けのプレリュードが終わり幕営地に引き返し、天幕を撤収し下山した。
小谷温泉で2時間、バスの待ち時間をつぶすのに大変だった。バス、電車を乗り継ぎ燕温泉に着いたのが午
後4時。露天風呂で3日間の汗を落とし戸隠キャンプ場に移動し幕営した。
最後に、妙高山から雨飾山への縦走計画を今年で４年も行けずに暖めてしまった。天候とか、仕事とか理由は色々だがここ縦走は絶対にやらなければならないという思いがだんだんと高まっていた。今日「ついにやった！」という気持ちで大満足だ。