北海道の山

十勝連峰〜大雪山

富良野岳〜十勝岳〜美瑛岳〜トムラウシ山〜黒岳〜朝日岳 1988-7/27〜8/3

1988年7月27日 晴
上野→羽田空港・発(
8:00)→千歳空港(9:25)→千歳駅(10:06)→電車・札幌駅(10:34)・発(11:00)→L、ライラック7号・旭川駅(12:35)・発(1451)→電車・上富良野駅(1545)・発(1630)→バス・十勝温泉(1706)       ※JAL503便 ¥25,500 
 北海道の屋根といわれる十勝連峰から大雪山の主脈縦走を計画した。南側は富良野岳にしトムラウシ岳を経て北側は大雪山の黒岳までとした。
 電車で上野駅へ、モノレールを乗り継ぎ羽田空港へ、そこからジェット機で千歳空港に着いた。機内では飛び立つとすぐ朝食が出た。
1時間半の飛行中での食事だからゆっくり食べてはいられない。食後、ホッとすると忘れ物に気が付いた。幌尻岳に行くとき使うレンタカーを運転する免許証だ。千歳空港に着き妻に電話し郵便で千歳空港の郵便局に局止めにして送ってもらうことにした。また、着替えの入った小荷物を空港のコインロッカーに預け十勝温泉に向かう。
 千歳駅から電車を乗り継ぎ上富良野駅へ、。電車は美瑛駅を過ぎた付近からスピードを落とし車窓に広がるラベンダー畑の観賞をアナウンスしていた。上富良野駅に降り立つと山登りをする服装をした人が3、4人いた。駅の改札をしている人の片腕が肩からない。本人の話しによると以前に山でヒグマにやられたのだという。
 45分ほどの待ち合わせでバスに乗り十勝温泉に着き、登山口の駐車場に幕営した。今回はテントの代わりにフライ付きツエルトを持ってきた。駐車場の片隅に水場があったが水量が細く3リットルの水を汲むのに11分もかかった。
 夕刻の茜色の空に浮かぶ十勝連峰の三峰山と富良野岳の眺めは素晴らしい。明日から始まる縦走への気持ちを高ぶらせる。
 

28日 曇
十勝温泉(4:40)→富良野岳(6:50)→山峰山(8:00)→上ホロカメトック山(8:50)→上ホロカメトック山避難小屋(9:00)→十勝岳(10:00)→美瑛岳・往復(11:50)→美瑛富士避難小屋(12:50)・幕営
 天幕を撤収し出発する。家でザックの計量をすると21kgほどあった。それに水とカメラを加えたからもう少し重くなっているだろう。富良野付近から十勝岳を望む
 十勝温泉から見る富良野岳はなだらかな裾野が美しく、本荘から見る鳥海山の面影を連想させる。道幅が2mもある広い遊歩道を進む。まもなく分岐が出てきてここを右にルートを取る。やがてハイマツ帯が多くなり登りが緩やかな鞍部の分岐点に出る。これを左に登ると広いお花畑が出てきて富良野岳の山頂に着いた。
 お花畑にはエゾコザクラの赤い花やエゾルリソウの紫そして白い花のシラネニンジンが所狭しと咲き乱れその光景は目を釘付けにする。山頂を後にし来た道を分岐点まで戻り十勝岳に向かう。
 上ホロカメトック山付近は樹木のない荒々しい風貌を見せていた。そこを下ると上ホロカメトック避難小屋がある。2階建ての小屋で今日の予定ははここまでであったがまだ9時だ。もう少し先に進むことにした。
 石のゴロゴロした美瑛岳を往復し、さらに進むと美瑛富士避難小屋に着いた。小屋は少しくたびれた建物であちこちビニールシートみたいなもので補修されている。中には既に数パーティ入っていたので小屋前の広場に幕営した。小屋の手前縦走路に残雪があり水が流れていたので汲みに行く。
夕食前に付近を散策すると瓦礫の中に出入りする生き物がいる。「チュウ、チュウ」鳴きながらチョロチョロする。鼠かと思って良く見るとナキウサギだ。しばらくその動きを見て楽しんでいると、小屋から二人連れの女子大生が来た。その様子を話すと是非見たいという。しかし、それ以降、ナキウサギは姿を見せることはなかった。しきりに悔しがっていた。
 夕食時にウイスキーをたしなんでいるとテント前にキタキツネが遊びにきた。つまみのサラミを与えると近づいてきて手からエサを取るようになった。その夜、ガサガサする音に目が覚めるとキタキツネが来ている。天幕の外においナキウサギをやっと撮影できたてあるのはガソリンと水の入れ物だけだが、まさかと思って確認すると、2つともない!。慌てて外に出て探す。ガソリン容器はすぐ近くにあったがポリタンは見つからない。あきらめ気味で朝まで寝る。水筒がないと縦走はできない。明るくなって再度探すとかなり下の登山道に放置されていた。

29日 晴
美瑛富士避難小屋(6:15)→ベベツ岳(7:05)→オプタテシケ山(8:10)→双子池キャンプ地(10:30)・幕営
 昨夜はとんだキタキツネのハプニングがあった。でも、ポリタンが見つかってホッとした。昨日は予定より多く進んだのできょうの行程は短い。ゆっくりの出発だ。ベベツ岳を通りオプタテシケ山の頂きに立つここからの展望は雄大だ。北方にはトムラウシ山が見え、遥か先には旭岳も見える。一息入れ先に進む。亀坂の急斜を下ると双子池キャンプ地に着いた。キャンプ地はハイマツの中の斜面にあり、団地のように見晴がいい。ここに着いのが1番なので水場が近く見晴のいい1等地に幕営した。
 時間もあるのでのんびり昼寝をしていると後続が来て数張り幕営している。水場に来た人に話しボールペンを譲ってもらう。途中で落としてしまったようで記録できずこまっていた。そんなことをしていると上富良野駅で会った人がきて燃料を分けてくれという。一瞬戸惑ったが白ガソリンを小型ホエーブに満タンにしてやった。この人は大阪から来たといい。空港の荷物検査でガソリンを没収されたと言っていた。

30日 曇
双子池キャンプ地(4:30)→コスマヌプリ(5:40)→ツリガネ山分岐(7:40)→山川台(さんせんだい)(9:00)→黄金ガ原→トムラウシ山(11:30)→ヒサゴ沼避難小屋(14:00
 双子池キャンプ地を後にしハイマツ帯につけられた登山道を進む。コスマヌプリを越えスマヌプリの鞍部からツリガネ山の登りにさしかかったとき10人ほどの女子高生のパーティに出会った。アンカーを歩いていたのは引率の先生か?。目を見張るほどの美人だ。口元が大地真央張りで肩に食い入るキスリングの重さに耐え必死に下ってくるその姿は一瞬、見とれてしまった。
 ツリガネ山分岐を下るとカール状のお花畑が右に見え残雪や沼も多く点在し風靡な別天地だ。山川台を越え一筋の登山道が延々と続く広大なお花畑とハイマツ帯の黄金ガ原を進む。所々に奇形な石組みがある。中にはどうやって乗せたかと思うような巨大な石が台の上に乗っている。トムラウシ付近で残雪がまだ残っている
 そのうち大石が積み上げられたようなトムラウシ山に着いた。その頃から湧いてきた霧で山頂の視界はない。先に進む。
 日本庭園と呼ばれる所にさしかかるとカメラを持って地べたにうつ伏せになっている2人連れがいる。おや!。と思い見ていると、ナキウサギを撮影していた。親切な人で私のカメラでも撮ってやるという。35
mmレンズの固定焦点カメラだからアップの撮影はできないが渡して取ってもらう。
 そこからしばらく歩くとヒサゴ沼避難小屋に着いた。小屋の中は既に宿泊者が一杯で入れない。小屋前の空き地に幕営した。水は沼の水を使う。沼の脇にはかなりの残雪がある。また、周囲にはシモツケソウが咲いていて霧にかすむピンク色が印象的だ。

31日 晴
ヒサゴ沼避難小屋(4:45)→化雲岳(5:50)→五色山(6:30)→忠別岳(8:15)→白雲岳避難小屋(12:00
 避難小屋を出て化雲岳、五色山、忠別岳と緩やかな登り降りの登山道を進む。ここまでは霧の中の歩行で展望のない歩きだったが忠別岳に来ると霧もはれてきた。山頂からは平ヶ岳や広大な高根ヶ原が見渡せる。先に進む。所々お花畑もあり目を楽しませてくれる。登山道から少し離れた右側は絶壁になっていてその下にはヤンペタップ川源流の湖沼群が見え青々とした湖面の色が美しい。
 ゆったりとした下りが延々と続く。しばらく歩くと白雲岳避難小屋が見えてきた。小屋は新築で大きい。山中のレストランのようだ。小屋前の広場に幕営する。水はお花畑に流れていた。広場にロープが張られ、そのロープに「ヒグマ注意」の張り紙がある。何をどう注意すればいいのか?。戸惑う。
 白雲岳避難小屋から山々の眺めは素晴らしい。高山植物のシナノキンバイの黄色を前面に青空に浮かぶトムラウシ山や十勝連峰は一服の絵だ。また、太陽に照らされ紫色に輝くエゾリンドウも可憐だ。家族で2、3日ほどゆっくり訪れてみたいものだ。

8月1日 晴
白雲岳避難小屋(4:35)→北海岳(6:40)→黒岳・往復(7:45)→北海岳(9:20)・発(10:00)→間宮岳→旭岳(11:00)・発(12:00)→ロープウエィ頂上駅(1:00)→ロープウエィ駅・バス発(15:00)→旭川駅・発(16:35)L、ライラック22号(札幌)18:34)→地下鉄・すすきの駅→ホテル東急イン・泊
 白雲岳避難小屋を出発し、北海岳にザックをデポしサブザックで黒岳に向かう。大雪のお鉢をを1周したかったが間宮岳から戻ってくるロスタイムがあるので止めた。
 黒岳山頂はまだ時刻が早いせいか靜だ。椅子に腰を下ろしパンを食っていると子リスが現れ見ていると私の手にまで這い上がってきた。愛くるしい目にほだされパンをひとかけらくれてやる。すると、すぐかけ去ってしまった。
 北海岳に戻りここで、十勝岳付近からいつも幕営地で一緒になり馴染みになった登山者を待つ。黒岳から下るといっていたから少し待ってみる。しかし、9時になっても現れない。あきらめて旭岳に向かう。すると間宮岳手前で出会う。旭岳を往復して来たという。同じことをやっていると思った。2、3分立ち話して分かれた。
 旭岳の東斜面の雪渓で多くの人がスキーを楽しんでいた。ポールも設置している。どこかの高校生のスキー部だろう。滑りを見ていると自分も滑りたくなって来た。先に進む。
 旭岳の山頂に着いた。縦走の最後のピークだ。大休憩をとり山望を脳裏に刻む。山頂をあとにし1時間ほど下るとロープウエィ山頂駅に着き今回の縦走に終止符を打った。
 ロープウエィで下りそこからバスと列車を乗り継ぎ札幌のホテルに止まり、風呂で6日間の垢と疲れを流しすすき野の街にくりだした。

2日 晴
札幌駅→千歳駅→車・幌尻岳登山口・車止め(13:30)・発(14:00)→取水ダム(15:10)→幌尻山荘(16:35
 千歳空港の郵便局に寄り、局止めの自動車運転免許証を受け取り駅レンタカーで予約しておいた車を借りる。小型車、
2日間、320kmまで、燃料を満タンで返却という条件、¥13,000
 幌尻岳に向かう。途中、食糧を買い出しい、振内の営林署に登山届けを出す。そこから林道に入るが困ったことに林道には殆ど標識がない。それに民家もない。道が分からなくなりやっと見つけた民家に入ろうとしたら黒い犬が出てきてクマかと思いビックリした。家の人は不在だった。やっとの思いで幌尻岳登山口に着いた。そこは林道の終点だ。
 額平川(ぬかひら)を遡行し幌尻山荘に向かう。取水ダムから先の登山道は殆ど川の中だ。渓流靴に履き替え登山靴はザックに括り付ける。15回も川を徒渉した。でも、この時期は川の水が心地よく冷たい。
 白樺の中にある幌尻山荘はこぎれいになっていた。中央にいろり、窓際に流し台付きの厨房があり、調味料や鍋、茶碗等が揃っている。階下には薪が積んであった。
 小屋には年配の男の先客がいて今日、幌尻岳を登って来たと言っていた。早速、冷たい水を汲んできてウイスキーで今日の疲れを癒す。

3日 晴
幌尻山荘(4:45)→命ノ水(5:25)→幌尻岳(6:40)→戸蔦別山(8:00)→幌尻山荘(10:00)・発(11:00)→取水ダム(12:20)→車止(13:20)・発(14:07)→千歳空港・発(19:35)→羽田空港→自宅     ※JAL522便
 幌尻岳の登りは始めから急斜面だ。樹林の中をひとしきり登ると命ノ水に着いた。水は冷たくてうまい。さらに登るとハイマツ帯になり視界が開けて来た。急斜をさらに登って行くと前方に幌尻岳の頭が見えてきた。眼下には北カールの斜面とその底には緑の多いお花畑が見える。登山道脇にも高山の花が咲いていて見ながら進むと幌尻岳に着いた。戸蔦別は湖が多い、熊もいるらしい
 山頂は風もあり冷たい。山望をして早めに下り戸蔦別山に向かう。ハイマツの中に続く登山道を下ると七ツ沼カールの分岐に出た。右手の七ツ沼は美しい所だったがなんとなくヒグマがいそうな気がして立ち寄らず戸蔦別山に登り返す。山頂に辿り着く少し手前で沢沿いの藪の木がガサガサ揺れ黒い物体が見えた。「スワッ」、逃げ腰になり良く見ると、黒っぽい服装の登山者だった。立ちすくんだ私の所に寄ってきて、この六ノ沢を沢登りしてきたのだという。札幌の人でこの辺の沢登りを楽しんでいるがまだ、クマには会ったことがないという。でも、脅かしものだよ!。
 下山にとりかかる。額平川に下りきると川沿いの道になるが踏跡はすぐなくなる。初めは登山靴を濡らすまいと努力したがダメ。あきらめて靴のまま何度も川を徒渉し幌尻山荘に着く。
山荘で荷をまとめしばらく下ると昨日山荘にいた年配の人に追いつく。たち止まるとすぐ、アブが寄ってきて肌に食いつく。コイツに刺されると痛い。追い払いながら歩いていると、この人。これがいいと霧吹きに入っている物を見せてくれた。「ハッか油」だという。少し使わせてもらう。なるほど効き目が抜群だ。全くアブが寄りつかなくたった。ただし、北見原産が良いと進めてくれた。
 車止めに戻り、千歳へ。レンタカーを返し千歳空港へ。着替えの入っているロッカーを開けようとしたが開かない。確認すると使用期限が過ぎていて高額の遅滞金を支払う。これでは着替えをこっちで買ったほうが良かった。
 千歳空港発19時35分で羽田空港へ。空路今回の山旅の回想にふける。

燃料 :1.00.2(コンロ満タン)=1.2リットル 残り0.3リットル
使用料:他人に分け与えた量 0.2リットル
    1.20.30.20.7リットル

HOME